あらすじ
文化祭、本番3分前。
演劇部部長のマコトから告げられたのは、
「今日の芝居、できない」
という一言だった。
上演予定だった作品の権利確認が完了していないことが判明し、その作品の上演は取りやめることに。
しかし客席には、すでにお客さんがいる。
中止する?
謝る?
それとも――何かやる?
一年生ヒナの、
「昔話とか」
という一言から、8人はその場で桃太郎を始めてしまう。
段ボール箱に「桃」と書けば、桃。
青い布を広げれば、川。
そこへ、遅れてやってきたサキが二時間十二分かけて作った「亀」を持って現れる。
浦島太郎まで始まってしまった。
桃太郎。
浦島太郎。
鶴の恩返し。
かぐや姫。
昔話は混ざり、役者も役もぐちゃぐちゃ。
ついに芝居そのものが止まってしまう。
「もう終わろう」
そう言うマコトに、サキが問いかける。
「途中でやめたら、これも、なかったことになる?」
ちゃんと準備できたものだけが、芝居なのか。
予定通りになったものだけが、物語なのか。
何もないところから、みんなで何かを作る。
笑って上演できて、少しだけ自分たちのことも考えられる、学生向け青春コメディ。
この作品の楽しみ方
学校にある物で上演しやすい
段ボールが桃になり、青い布が川にも海にも竜宮城にも。「見立て」そのものが作品の面白さです。
8人全員に役割がある
物語を動かす、笑いを作る、発想を変える、感情を動かす、舞台を成立させる。8人それぞれが芝居を支えます。
劇中劇で役替わりを楽しめる
高校生役から、桃太郎、犬、猿、キジ、亀、乙姫、鬼、鶴、かぐや姫へ。札、布、小道具、身体表現だけでも成立します。
前半はテンポの速いコメディ
「桃がない」「川がない」「きびだんごがない」「犬がやりたくない」。そこへ浦島太郎の亀が登場し、昔話がどんどん渋滞していきます。
後半には少しだけ青春劇
笑いの中に、「予定通りにならなかったものにも、意味はあるのか」という問いが自然に現れます。
演出のポイント(終盤の内容を含みます)
冒頭では、登場人物たちはすでに客席にいる観客を見て、「見るな」と言って目をそらします。
終盤では、部長マコトが自分から客席を見て、「むかしむかし、ある学校に、演劇部がありました」と、自分たち自身の物語を語り始めます。
客席から目をそらす冒頭と、自分から客席を見る終盤。その変化が作品の大切な部分です。