作:亜郎
作品情報
ジャンル
青春コメディ/メタ演劇/昔話
対象
中学生・高校生を中心とした上演
標準キャスト
8人
上演時間
約35〜45分(標準約40分)
舞台
文化祭。本番直前の舞台。
舞台装置
基本的に裸舞台で上演可能。
椅子、箱、布、棒、段ボール、紙など、学校にある物を使ってさまざまな物に見立てる。
音響・照明
特殊な設備を必要としない。
登場人物
マコト
演劇部部長。真面目。責任感が強いぶん、失敗すると全部自分で終わらせようとする。
チヒロ
副部長。現実的。問題が起きたとき、「今できること」を考える。
ケイ
考えるより先に動く。勢いで芝居を前へ進める。
モモ
明るく自由。思いついたことをすぐ試したがる。
ナギ
冷静なツッコミ役。妙なところだけ昔話に詳しい。
ヒナ
一年生。経験は浅いが、先入観のない発想をする。
リク
大道具・裏方中心の部員。本来は舞台へ出たくない。物を「別の何か」に変えるのが得意。
サキ
部員。今回上演するはずだった作品を楽しみにしていた。少し遅れて舞台へ現れる。
※役名・性別は上演団体に合わせて変更可。
1場 開演3分前
文化祭。
舞台上には、これから始まる芝居のための物が置かれている。
しかし誰も準備をしていない。
マコト、紙を持って立ち尽くしている。
チヒロ。
チヒロ「……もう一回言って」
マコト「できない」
チヒロ「何が」
マコト「今日の芝居」
ケイ「それは聞いた」
マコト「できない」
ナギ「二回言っても状況は変わらない」
モモ「あと三分だよ?」
ヒナ「お客さん、もういます」
全員、客席を見る。
間。
ケイ「……いるね」
ナギ「見るな」
一同、客席から目をそらす。
チヒロ「理由」
マコト「上演の権利確認、ちゃんと終わってなかった」
間。
ナギ「……それはダメ」
マコト「うん」
チヒロ「いつ分かった?」
マコト「さっき」
ケイ「さっき!?」
マコト「だから、やらない」
モモ「今日のやつを?」
マコト「うん」
ケイ「でも客いるよ?」
マコト「分かってる!」
間。
マコト「謝る」
ケイ「え?」
マコト「俺が出て、中止ですって言う」
チヒロ「待って」
マコト「待てない。あと三分」
チヒロ「だから待って」
マコト、止まる。
チヒロ「今日の作品はやらない。それは決定」
マコト「うん」
チヒロ「でも」
客席を見る。
チヒロ「何もやらないっていうのは、まだ決めてない」
間。
マコト「……何やるの」
誰も答えない。
ヒナ、おそるおそる手を挙げる。
ヒナ「昔話とか」
全員、ヒナを見る。
ヒナ「……ダメですか」
モモ「桃太郎!」
ケイ「それだ!」
ナギ「何が『それだ』なんだよ」
モモ「みんな知ってる!」
チヒロ「台本は?」
間。
ケイ「知ってるだろ」
ナギ「何を」
ケイ「桃太郎」
ナギ「あらすじと台本は違う」
モモ「桃から生まれて、犬と猿とキジ連れて、鬼を倒す」
ケイ「完成」
ナギ「六秒だったぞ」
舞台袖から声。
「開演一分前です!」
一同、固まる。
チヒロ「決めるよ」
マコト「本気?」
チヒロ「中止の説明だけで終わるより、できることをやる」
ナギ「できるかどうかは知らないけどね」
チヒロ「桃太郎。やる」
モモ「配役!」
ケイ「俺、桃太郎!」
ナギ「なんで」
ケイ「最初に言ったから」
リク「俺、裏方だからね」
全員、リクを見る。
リク「何」
チヒロ「犬」
リク「嫌だ」
チヒロ「決定」
リク「なんで俺だけ選択権ないの」
舞台袖。
「開演します!」
一同、慌てる。
マコトだけが動かない。
チヒロ。
チヒロ「部長!」
マコト「……知らないからな!」
暗転。
すぐ明転。
2場 桃太郎、始めました
ナギ、前へ。
ナギ「むかしむかし、あるところに――」
ケイ「ちょっと待って」
ナギ「始まってる!」
ケイ「俺いつ出る?」
ナギ「桃から」
ケイ「桃どこ?」
一同。
間。
モモ「ない」
ナギ「作っとけよ!」
リク、段ボール箱を出す。
リク「これ」
ケイ「桃に見えない」
リク「一分で本物の桃作れると思う?」
モモ、紙へ大きく「桃」と書き、箱に貼る。
モモ「はい」
間。
ケイ「桃だ」
ナギ「納得するんだ」
ナギ、語る。
ナギ「おばあさんが川で洗濯をしていると――」
モモ、おばあさんになる。
モモ「川がない」
リク、青い布を投げる。
モモ、受け取る。
モモ「川!」
ナギ「大きな桃が、どんぶらこ、どんぶらこと――」
リク、桃箱を押す。
止まる。
ナギ「……どんぶらこ」
リク、また押す。
止まる。
ナギ「どんぶらこ!」
リク「平らなんだから勝手に流れないよ!」
箱の中から。
ケイ「早く拾って!」
モモ。
モモ「桃がしゃべった!」
ナギ「拾え!」
モモ、桃を拾う。
モモ「まあ、大きな桃」
ケイ「早く割って」
モモ「急かすな」
箱を開ける。
ケイ、飛び出す。
ケイ「桃太郎!」
間。
ナギ「……生まれました」
ケイ「もっと驚いて!」
ナギ「時間がない!」
桃太郎、旅立つ。
ケイ「鬼ヶ島へ鬼退治に行ってきます!」
モモ「気をつけてね」
ケイ「きびだんごください」
間。
モモ「ない」
ケイ「おばあさん!」
リク、紙を丸めて渡す。
リク「これ」
ケイ「何」
リク「きびだんご」
ケイ「紙じゃん」
リク「食うなよ」
犬。
リク。
リク「……わん」
ケイ「やる気!」
リク「裏方なんだよ!」
ケイ「犬よ! きびだんごをやろう!」
紙を渡す。
リク「いらない」
ケイ「仲間になってくれ!」
リク「嫌だ」
ケイ「話が進まない!」
リク、仕方なくついていく。
モモ、猿。
ヒナ、キジ。
モモ/猿「きびだんご一個で命懸けの鬼退治?」
一同、止まる。
ケイ「……昔話だから」
モモ/猿「待遇悪くない?」
ナギ「今そこ考えるな」
ヒナ/キジ「保険は?」
ナギ「ない!」
リク/犬「じゃあ俺、降りる」
ケイ「犬!」
そのとき。
舞台袖からサキが飛び込んでくる。
大きな亀を抱えている。
サキ「間に合った!」
全員、止まる。
サキも止まる。
桃太郎一行を見る。
サキ「……何してるの?」
ナギ「こっちの台詞だよ」
サキ、亀を持ち上げる。
サキ「浦島太郎」
間。
ケイ「……なんで?」
3場 浦島太郎も始まりました
チヒロ「説明して」
サキ「昨日マコトが」
一同、マコトを見る。
マコト「待って」
サキ「『もし権利確認ダメだったら、昔話とかなら――』って」
マコト「相談しただけ!」
サキ「だから作った」
亀を見せる。
間。
ナギ「行動力すごいな」
サキ「二時間かかった」
リク「出来いいもん」
サキ「でしょ?」
リクとサキ、亀を見る。
ケイ「今そこじゃない!」
チヒロ「つまり、マコトは昨日の時点で、確認が間に合わないかもしれないと思ってた?」
マコト。
マコト「……うん」
ナギ「先に言え!」
マコト「ごめん」
間。
マコト、サキの亀を見る。
マコト「……それ、本当に二時間?」
サキ「二時間十二分」
ケイ「細かい」
マコト、少しだけ笑う。
そして。
マコト「……ごめん。やろう」
チヒロ、マコトを見る。
チヒロ「浦島太郎?」
マコト「もう、ここまで来たら」
ナギ「まだ全然来てないけどね」
マコト「やろう」
サキ、舞台を見回す。
サキ「で、桃太郎?」
モモ「うん」
サキ「浦島太郎は?」
一同。
ナギ「やらない」
サキ、亀を見る。
サキ「二時間十二分」
間。
モモ。
モモ「やろう」
ナギ「情に負けるな!」
ヒナ。
ヒナ「桃太郎が亀を助ければ、一緒にできます」
間。
ナギ「なんで一緒にする必要があるの」
ヒナ「時間がないので」
チヒロ、考える。
チヒロ「採用」
ナギ「採用するな!」
ケイ、亀を発見。
ケイ/桃太郎「あっ! 亀がいじめられている!」
サキ。
サキ「誰に?」
間。
一同、リクを見る。
リク「俺?」
チヒロ「お願い」
リク「犬やってるんだけど」
モモ「犬が亀をいじめてる」
リク「最悪の犬じゃん!」
なんとか亀を助ける。
サキ、亀役。
サキ/亀「助けていただいたお礼に、竜宮城へご案内します」
ケイ/桃太郎「今、鬼ヶ島向かってるんだけど」
サキ/亀「すぐです」
ケイ「どっち?」
サキ、上手を指す。
ヒナ、下手で「鬼ヶ島」の札。
ヒナ「鬼ヶ島、こっちです」
ケイ、左右を見る。
ケイ「逆じゃん!」
ナギ「昔話が渋滞してる!」
4場 むかしむかし、大混雑
竜宮城。
リクが青い布を川から海へ変える。
リク「はい、海」
ナギ「便利だな、それ」
リク「一本しかないからね」
乙姫役がいない。
チヒロ「誰か乙姫!」
一同、目をそらす。
リク「俺を見るな」
ヒナ、手を挙げる。
ヒナ「やります」
ケイ「キジは?」
ヒナ、キジの札を舞台端へ置く。
ヒナ「待機」
ナギ「物になった!」
ヒナ、乙姫。
ヒナ/乙姫「ようこそ、竜宮城へ」
ケイ/桃太郎「鬼退治の途中なので帰ります」
ヒナ「早い」
ケイ「玉手箱ください」
ヒナ「まだ何もしてません」
ケイ「時間がない」
ナギ「桃太郎が玉手箱もらうな!」
モモ、竹を見つける。
モモ「ねえ、これ使わない?」
ナギ「何」
モモ「竹」
ナギ「見れば分かる」
モモ「かぐや姫」
マコト「増やすな!」
モモ「昔話なんだから」
ナギ「昔話は食べ放題じゃない!」
モモ、竹を割る。
中からリク。
間。
リク「……」
ケイ「かぐや姫?」
リク「違う」
モモ「じゃあ戻って」
リク「俺を竹に戻すな!」
笑い。
全員が好き勝手に話を進め始める。
ケイ「鬼ヶ島!」
サキ「竜宮城!」
モモ「かぐや姫!」
ヒナ「キジ、まだ待ってます」
リク「俺、犬!」
ケイ、亀をつかもうとする。
サキ「亀は丁寧に!」
ケイ、止まる。
サキ「二時間十二分!」
ケイ、そっと亀を置く。
ケイ「はい」
すぐまた混乱。
ナギ「そこだけ統率取れるんだ!」
さらに混乱。
ナギ、ついに。
ナギ「一回止めよう!」
全員、静止。
完全な静寂。
間。
ナギ。
ナギ「……止めちゃった」
チヒロ。
チヒロ「本番中」
ナギ「知ってる」
ケイ。
ケイ「どうする?」
誰も答えない。
マコト、散らかった舞台を見る。
5場 止まりました
ケイ「……誰か続けて」
モモ「何を?」
ケイ「何か」
ナギ「一番困る指示」
ケイ「じゃあ桃太郎!」
ナギ「今、竜宮城」
ケイ「浦島太郎!」
サキ「あなた桃太郎でしょ」
ケイ「兼役!」
リク「主役が兼役するな」
ヒナ「かぐや姫は?」
一同、リクを見る。
リク「俺はかぐや姫じゃない!」
少し笑い。
しかし、すぐ止まる。
マコト。
マコト「……もういい」
一同、止まる。
チヒロ「マコト」
マコト「無理だった」
間。
マコト「やっぱり、無理だった」
マコト「終わろう」
ケイ「どうやって」
マコト「謝る」
チヒロ「また?」
マコト「だって、これ以上やったって――」
散らかった舞台を見る。
マコト「こんなの、見せるものじゃない」
間。
サキ。
サキ「私は見たかったけどね」
マコト「何を」
サキ「今日やるはずだったやつ」
間。
サキ「ずっと稽古してたじゃん」
「私、出番少なかったけど」
ケイ「そこは言わなくていい」
サキ「でも好きだった」
マコト、何も言えない。
サキ「なくなったって聞いたとき、普通に腹立った」
マコト「……ごめん」
サキ「うん」
間。
サキ、桃、青い布、亀を見る。
サキ「でも」
サキ「これも、なくなるの?」
マコト「え?」
サキ「途中でやめたら」
サキ「これも、なかったことになる?」
間。
モモ、桃箱を拾う。
モモ「私は桃だった」
ナギ「箱がね」
モモ「すごい桃だった」
リク「『桃』って紙貼っただけ」
モモ「伝わったでしょ?」
少し笑い。
ヒナ、青い布を拾う。
ヒナ「川にもなりました」
リク「海にもなった」
ナギ「竜宮城にも」
ケイ「働き者だな」
リク。
リク「一本しかないからな」
間。
チヒロ。
チヒロ「じゃあ、終わらせよう」
マコト。
マコト「だから――」
チヒロ「中止じゃなくて」
散らかった舞台を見る。
チヒロ「これを」
6場 昔話の人たちは、だいたい言うことを聞かない
一同、道具を拾う。
ケイ「何から?」
ナギ「まず桃太郎」
ケイ「鬼倒してない」
サキ「浦島太郎、帰ってない」
モモ「かぐや姫、出てきてもいない」
全員、リクを見る。
リク「俺はかぐや姫じゃない!」
ヒナ「鶴もまだです」
ナギ「増やすな!」
ヒナ「やりたいです」
ナギ「なんで」
ヒナ「『見ないでください』って言いたい」
間。
ケイ「そこ?」
ヒナ、布をかぶる。
ヒナ/鶴「絶対に、見ないでください」
リク。
リク「分かった」
待つ。
リク、見ない。
さらに待つ。
ヒナ「……見ません?」
リク「見るなって言ったじゃん」
ヒナ「そうなんですけど」
リク「約束だから」
ヒナ、布から顔を出す。
ヒナ「終わっちゃいました」
ナギ「そうなるよ!」
笑い。
サキ。
サキ「浦島太郎も同じじゃない?」
ケイ「何が」
サキ「『開けるな』って言われてるのに開ける」
モモ「鶴は『見るな』」
ヒナ「見る」
ケイ「浦島太郎は『開けるな』」
サキ「開ける」
リク「昔話の人、話聞かないな」
ナギ「登場人物な」
モモ「でも、言うこと聞いたら話終わるよ?」
一同、止まる。
ケイ「……確かに」
ヒナ「じゃあ昔話って、言うこと聞かなかった人の話ですか?」
リク「だいぶ怒られそうなまとめ方だな」
少し笑い。
ナギ、道具を見る。
ナギ「でも……」
一同、ナギを見る。
ナギ「予定通りにならなかったから、話になったのかもね」
間。
ナギ、自分で言ってから少し恥ずかしくなる。
ナギ「……今のなし」
モモ「なんで?」
ナギ「ちょっといいこと言った感じになった」
ケイ「言った感じじゃなくて、言ったよ」
ナギ「忘れて」
チヒロ。
チヒロ「桃太郎は?」
ケイ「鬼退治」
リク。
リク「誰に頼まれたの?」
ケイ、止まる。
ケイ「……誰だっけ」
ナギ「知らない」
リク「じゃあ、なんで行くの」
ケイ「鬼だから?」
サキ。
サキ「鬼なら倒していいの?」
ケイ「え」
ナギ「急に難しくするな」
モモ。
モモ「本人に聞けば?」
ケイ「誰に」
モモ「鬼」
間。
ケイ、周囲を見る。
ケイ「……鬼できる人?」
全員、マコトを見る。
マコト「俺?」
ナギ「部長」
マコト「だから何」
ナギ「鬼」
マコト「なんで」
チヒロ「責任者だから」
マコト「鬼の決め方おかしいだろ!」
7場 結末、変更します
即席の鬼ヶ島。
段ボールに「鬼ヶ島」。
マコト、鬼。
ケイ/桃太郎「鬼!」
マコト/鬼「はい」
ケイ「勝負だ!」
マコト/鬼「嫌です」
間。
ケイ「……え?」
マコト/鬼「今日はちょっと」
ケイ「鬼が?」
マコト/鬼「鬼にも予定があります」
リク/犬「帰ろう」
ケイ「待て!」
モモ/猿「私も帰る」
ヒナ/キジ「私も」
ケイ「仲間!」
リク「きびだんご一個分は働いた」
ケイ「まだ何もしてない!」
マコト。
マコト/鬼「そもそも、何しに来たんですか」
ケイ「鬼退治!」
マコト/鬼「私、何しました?」
ケイ、止まる。
ケイ「……悪いこと」
マコト/鬼「具体的に」
ケイ「……」
マコト/鬼「何か盗みました?」
ケイ「知らない」
マコト/鬼「誰か襲いました?」
ケイ「知らない」
マコト/鬼「じゃあ」
間。
マコト/鬼「お茶でも飲みます?」
ケイ「……はい」
ナギ「和解した!」
すぐ転換。
浦島太郎。
サキ、玉手箱をケイへ。
サキ/乙姫「決して開けないでください」
ケイ/浦島太郎「分かりました」
箱を置く。
サキ「……」
ケイ「何?」
サキ「本当に開けないの?」
ケイ「開けるなって言ったじゃん」
サキ「……そうだけど」
ケイ「じゃ」
去る。
サキ「終わった!」
リク「平和」
すぐ転換。
鶴。
モモ。
モモ/鶴「絶対に、のぞかないでください」
リク「はい」
モモ「絶対だよ」
リク「はい」
間。
モモ「……」
リク「……」
モモ「ちょっとは気になれよ!」
リク「注文が多い!」
笑い。
笑いが収まる。
ヒナ、竹を持つ。
ヒナ「かぐや姫」
ナギ。
ナギ「やるの?」
ヒナ、うなずく。
竹の後ろから出る。
ヒナ/かぐや姫「月へ帰らなければなりません」
チヒロ。
チヒロ「帰りたい?」
ヒナ、止まる。
ヒナ/かぐや姫「……分かりません」
チヒロ「じゃあ、分からなくていいんじゃない」
ヒナ「でも、決めないと」
サキ。
サキ「今日?」
間。
サキ「今日じゃなくてもいいんじゃない?」
ヒナ、考える。
ヒナ/かぐや姫「……じゃあ、今日は帰りません」
ナギ。
ナギ「月は困るだろうけどね」
モモ「連絡しとく?」
リク「だから、どうやって」
小さな笑い。
マコトは、その様子を見ている。
8場 むかしむかし
散らかった舞台。
先ほどまでより少し静か。
チヒロ、マコトを見る。
チヒロ「部長」
マコト「何」
チヒロ「終わらせて」
マコト「俺?」
チヒロ「うん」
マコト「どうやって」
ナギ「そこから?」
ケイ「『めでたし、めでたし』」
モモ「雑」
リク「最初も雑だった」
ヒナ。
ヒナ「じゃあ、最初から」
マコト「最初から?」
ヒナ「『むかしむかし』から」
間。
マコト、客席を見る。
1場では目をそらした客席を、今度は見る。
マコト「……むかしむかし」
ナギ。
ナギ「本当にそこからやるんだ」
マコト「静かにして」
改めて。
マコト「むかしむかし、ある学校に、演劇部がありました」
一同、少しずつマコトを見る。
マコト「文化祭の日」
マコト「その演劇部は」
少し言いづらそうに。
マコト「上演するはずだった芝居を、上演できなくなりました」
ケイ。
ケイ「そこ正確にしたんだ」
チヒロ。
チヒロ「黙って」
マコト「仕方がないので」
マコト「桃から人を出したり」
モモ。
モモ「出しました」
マコト「亀について行ったり」
サキ、二時間十二分かけた亀を大事に抱える。
サキ「行きました」
マコト「鬼とお茶を飲んだり」
ケイ。
ケイ「飲みました」
マコト「竹から――」
リク、警戒。
マコト。
マコト「……ヒナが出てきたりしました」
リク、ほっとする。
ナギ「そこ気にしてたんだ」
少し笑い。
マコト。
マコト「めちゃくちゃでした」
間。
マコト「でも」
一同を見る。
マコト「途中で、やめませんでした」
サキ、マコトを見る。
マコト「それで――」
止まる。
ヒナ。
ヒナ「それで?」
マコト。
マコト「……分からない」
ケイ「部長!」
マコト「だって、まだ終わってない」
客席を見る。
マコト「この先どうなるかなんて」
マコト「今の俺たちには、分からない」
間。
マコト「でも」
少し笑う。
マコト「今日の話は、ここまで」
静かな間。
ヒナ。
ヒナ「じゃあ、めでたし?」
マコト。
マコト「どうだろう」
モモ。
モモ「めでたかった人?」
ケイ、手を挙げる。
ヒナも。
サキも。
リク、少し迷って挙げる。
チヒロも。
マコトも。
ナギ、一同を見る。
ため息。
最後に手を挙げる。
ナギ「……じゃあ、めでたし」
ケイ。
ケイ「せーの!」
一同「めでたし、めでたし!」
一拍。
リク。
リク「……で、いいの?」
一同、リクを見る。
一同「いいの!」
暗転。