Staging Tool

舞台進行スタッフのいろは / 第一部

第1回|初めての現場で、まず知っておきたいこと

初めて舞台の現場へ入る日。

何をしたらいいのか分からない。

どこに立てばいいのか分からない。

知らない言葉ばかり飛んでくる。

周りの人は、みんな忙しそう。

そんな状態になるのは、ごく普通のことです。

最初から気の利いたことをする必要はありません。

舞台の仕事は、最初から全部できる人だけが入れる世界ではありません。

まずは、ひとつずつ覚えていけば十分です。

1.ほんのちょっぴりだけ、自分から動いてみよう

初めての現場では、分からないことばかりです。

だから、最初から気の利いたことをする必要なんてありません。

でも、ほんのちょっぴりだけ、自分から動いてみてください。

「おはようございます」と、自分からあいさつしてみる。

分からないことがあったら、自分から聞いてみる。

誰かが荷物を運んでいたら、「何かお手伝いできますか?」と聞いてみる。

それだけでいいんです。

舞台の仕事では、誰かから声をかけてもらうまで、ずっと待っているだけだと、なかなか仕事を覚えるきっかけが見つかりません。

でも反対に、何も知らないうちから勝手に判断して動くのも危険です。

だから最初は、

見る。

ちょっと考える。

聞いてみる。

そして、できることをひとつやってみる。

それくらいで十分です。

2.分からないときは、聞いていい

舞台では、知らない言葉がたくさん出てきます。

「平台持ってきて」

「上手へお願いします」

「そのバトン下げます」

最初は、何を言われているのか分からないことがあります。

そんなとき、分かったふりをしなくて大丈夫です。

「すみません、平台ってどれですか?」

「上手は、こちらで合っていますか?」

一度聞けば、ひとつ覚えます。

次に同じ言葉が出てきたときには、もう少し分かるようになります。

3.まず「誰に聞けばいい?」を知っておこう

大きな現場には、たくさんの人がいます。

分からないことがあったとき、誰に聞けばいいのか分からないと、それだけで困ってしまいます。

だから最初に、

「今日は、私は誰の指示で動けばいいですか?」

「分からないことは、どなたに聞けばいいですか?」

と確認しておくと安心です。

全部の偉い人を覚える必要はありません。

まず、自分が今日一緒に動く人を知っておけば十分です。

4.まずは、まわりを見てみよう

舞台の仕事では、「見る」ことがとても大切です。

人がどこを通っている?

大きな物はどこを通る?

誰が誰に声を掛けている?

何かが動く前に、どんな声が聞こえる?

先輩は、どこに立っている?

最初は意味が分からなくても構いません。

見ているうちに、少しずつ現場の流れが分かってきます。

5.勝手に触らない。でも、怖がりすぎなくていい

舞台には、機械、電気、大きな道具、吊られている物など、いろいろなものがあります。

何に触ってよいのか分からなければ、先に聞いてください。

「これは動かしていいですか?」

「ここに置いて大丈夫ですか?」

それで十分です。

知らないから触らない。

でも、知らないままにしない。

少しずつ教えてもらえばいいんです。

6.「ここ、ちょっと気になる」は伝えていい

床に何か落ちている。

ケーブルが通路へ出ている。

いつもと違う音がする。

何かが少し傾いているように見える。

そんなとき、自分で直せるか分からなくても、気づいたことは伝えて構いません。

「これ、大丈夫ですか?」

「ここ、ちょっと気になりました」

それだけでも立派な情報です。

7.あいさつは、思っているより大切

「おはようございます」

「よろしくお願いします」

「お疲れさまでした」

舞台の現場では、いろいろな会社、劇場、作品の人が一緒に働くことがあります。

あいさつをすると、お互いに「今日一緒に仕事をする人なんだ」と分かります。

難しいコミュニケーションの前に、まずはあいさつからで十分です。

8.最初から速くなくていい

先輩たちは、驚くほど速く動くことがあります。

でも、新人がいきなり同じ速さで動く必要はありません。

速さより、まず間違えないこと。

安全にできること。

分からなければ確認すること。

慣れてくれば、自然に少しずつ速くなります。

9.「何かやらなきゃ」と焦りすぎなくていい

忙しい現場にいると、立っているだけで申し訳ない気持ちになることがあります。

でも、手を出さない方がいい時間もあります。

今は何をしているのか。

自分にできることはあるのか。

分からなければ、

「今、何かお手伝いできることありますか?」

と聞けばいいんです。

「今は大丈夫」と言われたら、それもひとつの答えです。

10.休憩も仕事のうち

舞台の仕事は、長時間になることがあります。

水分をとる。

食事をする。

座れるときに休む。

疲れすぎると、普段なら気づけることに気づけなくなることがあります。

最後までちゃんと仕事をするためにも、休めるときには休みます。

11.一日で全部覚えなくていい

初日に覚えられることなんて、ほんの少しです。

今日は、上手と下手を覚えた。

明日は、平台を覚えた。

次は、舞台袖の通り道が少し分かった。

それで十分です。

ひとつずつ増えていきます。

12.最初の目標は「すごい新人」ではなくていい

最初から何でもできる人を目指す必要はありません。

まずは、

人の話を聞ける。

分からないことを聞ける。

気づいたことを伝えられる。

お願いされたことを、ひとつずつ丁寧にやる。

それだけで、立派な第一歩です。

おわりに

舞台の仕事を覚える最初の一歩は、ものすごく頑張ることでも、誰よりも速く動くことでもありません。

ほんのちょっぴり、自分から動いてみること。

そして、分からなければ聞くこと。

まずは、そこからで十分です。