仕込みが始まると、舞台のあちこちで人が動き始めます。
新人さんは、そこで困ります。
「私は、どこにいればいいんだろう?」
今回は、仕込み中の居場所と、何を見ればいいのかを考えてみます。
1.まず、自分の「居場所」を聞いてみよう
分からなければ、最初に聞いてください。
「私は、どこにいればいいですか?」
「今日は、どなたの指示で動けばいいですか?」
仕込み中は、使う場所が次々と変わります。
自分ひとりで完璧な場所を探さなくて大丈夫です。
2.人の「通り道」を見る
同じ人が何度も通る場所があります。
そこは、人の道かもしれません。
立ち止まらない。
荷物を置かない。
道を空ける。
これだけでも、十分役に立ちます。
3.大きな物が通る道は、もう少し広く見る
大道具や長い材料、台車は、人より広い場所を使います。
特に曲がるときは大きくふくらむことがあります。
「先輩たちが少し離れているな」と思ったら、そこには理由があるかもしれません。
4.仕込みでは「上」も動いている
舞台の上には、幕、大道具、照明、スピーカー、映像機材などがあります。
何かが動く前には、周囲へ知らせる声が掛かることがあります。
声が聞こえたら、いったん手を止めて、何が動くのか確認します。
5.声が掛かったら、ほんの一瞬「聞く」
すべての声が自分への指示ではありません。
でも、周囲へ知らせる声は、聞いておくと大切な情報になります。
舞台では、目だけでなく耳からも情報が入ってきます。
6.必要なときには、自分から声を出す
大きな物を運ぶ。
人の後ろを通る。
相手から自分が見えにくい。
そんなときは、現場の言い方に合わせて、短く声を掛けます。
黙って突然近づくより、お互いに動きやすくなります。
7.「何かやった方がいいかな?」と思ったら
「何かお手伝いできますか?」
「これ、持ちましょうか?」
と聞いてみます。
「今は大丈夫」と言われたら、それも仕事の流れのひとつです。
無理に手を出さなくて大丈夫です。
8.触っていい物と、まだ触らない物
何に使うのか分からない物。
機械。
電気。
吊られている物。
高いところで使う物。
こうしたものは、分からなければ先に聞きます。
好奇心は大歓迎。
でも、勝手に操作しない。
9.「手伝う」と「勝手に変える」は違う
通りにくそうだから、このケースをどかそう。
そう思って動かしたら、実は次に使う物だった。
そんなこともあります。
自分から動くことと、勝手に判断することは別。
迷ったら一言聞きましょう。
10.手が空いたら、ほんの少し先を見る
自分が運んだ物を、先輩は次にどう使った?
次は何が必要になりそう?
誰かが何かを探していない?
少しずつ、
「次は何だろう?」
という見方をしてみます。
11.でも、先回りしすぎなくていい
新人のうちから、何でも先に読もうとしなくて大丈夫です。
半歩先くらいで十分です。
「これ、次に準備しますか?」
と聞けば、答えそのものが勉強になります。
12.分からない言葉は、あとで聞いてみる
サブロク。
尺。
バトン。
ケコミ。
平台。
箱馬。
タッパ。
最初は知らない言葉ばかりです。
忙しそうなら覚えておいて、落ち着いたときに聞いてみましょう。
13.ヘルメットや安全靴などには理由がある
作業内容によって、ヘルメット、安全靴、手袋などが必要になることがあります。
まず、その現場の指示に従います。
理由が分からなければ、あとで聞いてみると勉強になります。
14.「ちょっと危ないかも」は言っていい
何かが落ちそう。
通路を塞いでいる。
ケーブルにつまずきそう。
さっきと違って見える。
そんなとき、自分で直せなくても、
「これ、大丈夫ですか?」
と伝えて構いません。
15.仕込みでは「待つ」ことも覚えよう
第2回で、舞台袖は「待っているだけの場所ではない」と書きました。
ここでいう「待つ」は、ぼんやり何もしないという意味ではありません。
上の作業が終わるのを待つ。
別の人が場所を使い終わるのを待つ。
安全に次へ進める時間を待つ。
その間に、周りを見て、次を考えます。
16.休憩するときは、ちゃんと休む
水分をとる。
食べる。
座る。
仕込みは長くなることがあります。
休憩は、最後までちゃんと仕事をするための時間です。
17.少しずつ、「現場のリズム」が分かってくる
みんなが一気に動く時間。
少し待つ時間。
ひとつの作業へ集中する時間。
次の準備へ移る時間。
仕込みには、独特のリズムがあります。
何度か経験すると、少しずつそれが見えてきます。
18.目指すのは「忙しそうな人」じゃない
走り回っている人が、一番仕事ができるとは限りません。
必要なときに、必要なところへいること。
人の道を見る。
物の道を見る。
上を見る。
声を聞く。
分からなければ聞く。
少し先を見る。
それができれば、十分です。
おわりに
仕込み中の舞台は、とても忙しそうに見えます。
でも、その中には、動く時間、待つ時間、空けておく場所、声を掛けるタイミングがあります。
見る。聞く。分からなければ聞いてみる。できることがあれば、やってみる。
第1回でお話ししたことが、ここでもそのまま使えます。
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