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舞台進行スタッフのいろは / 第一部

第9回|インカムって、何を話しているの?

舞台袖でスタッフがヘッドセットを着けて、小さな声で話していることがあります。

あれが、インカムです。

離れた場所にいるスタッフ同士が、本番の情報を共有するために使います。

1.スタッフ同士の電話みたいなもの?

少し似ています。

ただ、インカムでは一対一ではなく、何人ものスタッフが同じ回線を聞いていることがあります。

誰とつながっているかは、作品や設備によって違います。

2.何のために使うの?

舞台袖、照明、音響、映像、舞台機構など、離れた場所にいる人たちが、同じ本番を一緒に進めるためです。

普通の声では届かない場所同士をつなぎます。

3.どんなことを話すの?

「次、○○です」

「スタンバイお願いします」

「準備できています」

「少し待ってください」

「GO」

本番の進行に必要な情報をやり取りします。

4.スタンバイとGO

作品によって言葉は違いますが、次のキューが近いことを知らせるために「スタンバイ」、実行の合図として「GO」を使うことがあります。

すべての作品が同じやり方ではありません。

5.GOの前には準備がある

GOが来てから何をするか考えるのではなく、その前に準備をして待ちます。

出演者はそろっている?

機械は準備できている?

道は空いている?

いろいろな確認の先に、短いGOがあります。

6.返事も大切

呼ばれたら、現場のやり方に合わせて短く返事をします。

聞こえているのか、準備できているのか、相手に伝わることが大切です。

7.まだ準備できていなければ、ちゃんと言う

「まだです」

「確認中です」

本番だからこそ、正しい状態を伝えます。

8.「話さないこと」も仕事

インカムは、話す道具であると同時に、聞く道具です。

必要がないときは回線を空ける。

今この話は必要か、少し考える。

9.最初は、聞くことからでいい

初めてインカムを着けると、知らない声や言葉がたくさん聞こえます。

いきなり上手に話そうとする必要はありません。

まず、誰がいつ話しているのか聞いてみましょう。

10.マイクが入っていることを忘れない

機種や設定によっては、自分の声がそのまま回線へ入ることがあります。

近くの会話や独り言が聞こえることもあります。

その現場での使い方を最初に教えてもらいましょう。

11.雑談はしてはいけないの?

ここは現場によります。

落ち着いた時間に短い会話がある現場も、ほとんど雑談しない現場もあります。

共通しているのは、本番の進行が最優先ということです。

12.話しかける相手を分かりやすく

大勢が同じ回線にいるなら、誰への話なのか分かるようにします。

「下手さん」

「機構さん」

など、現場のやり方に合わせます。

13.回線が分かれていることもある

大きな現場では、用途ごとに複数の回線を使うことがあります。

初めてなら、「これは誰とつながっていますか?」と確認しておきましょう。

14.トラブルのときほど、短く正確に

何が起きている?

どこで起きている?

まずそこを伝えます。

詳しい説明は、そのあとで構いません。

15.「沈黙」も本番をつくっている

インカムは、ずっと喋り続けるものではありません。

静かな時間に、みんな舞台を見ています。

必要な瞬間だけ、短い声が入ります。

16.インカムの中には、舞台全体が流れている

上手では出演者を待っている。

下手では次の大道具を準備している。

照明は次のキューを待っている。

離れた場所にいる人たちが、ひとつの舞台を見ています。

17.でも、インカムだけに頼らない

自分の目で見る。

周りを見る。

近くの人と声を掛け合う。

インカムは大切な道具ですが、自分の目や耳の代わりではありません。

18.声の向こう側が、だんだん見えてくる

慣れてくると、インカムの言葉と目の前の舞台がつながります。

「今、あの大道具のことを話しているんだ」

「もうすぐ照明が変わるんだ」

少しずつ、舞台全体が見えてきます。