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舞台進行スタッフのいろは / 第一部

第16回|バラシって何? 舞台が劇場へ戻るまで

最後の公演が終わりました。

今日は、いつもの終演後とは少し違います。

明日はもう、この作品を上演しません。

今度は、作品のためにつくった舞台を、少しずつ解いていきます。

これを、現場ではバラシと呼ぶことがあります。

1.バラシって何?

仕込んだ大道具や機材を解体し、劇場から運び出していく作業です。

「仕込みの反対」と考えると分かりやすいですが、ただ逆の順番でやればよいわけではありません。

2.バラシにも順番がある

この大道具を先に外す。

その前に、絡んでいる機材を外す。

搬出の道を先に空ける。

いろいろな仕事がつながっています。

3.バラシの話は、終演前から始まっている

最後の公演が終わってから、初めて「どう片付けよう?」と考えるのではありません。

大きな現場では、事前に作業手順、搬出順、置き場所などを打ち合わせます。

4.「サバキ場所」を決めておく

外した大道具や機材を、一度どこかへ置くことがあります。

こうした一時置きの場所を「サバキ場所」などと呼ぶことがあります。

置き場所が決まっていないと、通路を塞いだり、次の作業ができなくなったりします。

5.最後の公演が終わる

本番用の明かりから、作業用の明かりへ。

衣裳から作業着へ。

劇場が、また大きな作業場へ戻っていきます。

6.いきなり全部を外し始めない

出演者は舞台から降りた?

客席側の状況は大丈夫?

作業手順は共有されている?

必要な確認をしてから始めます。

7.最初に「道」をつくることもある

解体した物は、劇場の外へ運びます。

そのための搬出動線が必要です。

搬出の道に関係する部分を先に空けることもあります。

8.いろいろなセクションが一斉に動く

大道具。

照明。

音響。

映像。

小道具。

いろいろな場所で作業が始まります。

自分の仕事だけでなく、他の人が何をしているかも見ます。

9.「早い人」が一番ではない

バラシはとても速く進むことがあります。

でも、大切なのは誰より早く片付けることではありません。

速さは、手順と経験の結果。慌てることとは違います。

10.分からない物を勝手に外さない

ねじ、ロープ、ケーブル。

何に使っているか分からなければ、先に聞きます。

まだ何かを支えているかもしれません。

11.電気を使うものは、状態を確認してから

本番が終わったからといって、何でもすぐ抜けばよいわけではありません。

担当の手順に従います。

12.バラシでも「上」を見る

頭の上の吊物も外していきます。

仕込みと同じように、周囲の声を聞き、動いている物の下へ不用意に入らないようにします。

13.暗くなった場所にも気づく

照明や大道具を外すと、それまで明るかった場所が暗くなることがあります。

今の状態を見て、必要なら作業用の明かりを使います。

14.外した物を、ただ積めばいいわけではない

ケースに入れる。

梱包する。

トラックへ積む。

次に使う順番や、壊れやすさなどを考えて積むことがあります。

ツアーなら、次の劇場での搬入も考えます。

15.搬入口は、どんどん忙しくなる

舞台から物が集まり、搬入口へ流れていきます。

後半ほど混み合うことがあります。

周囲を見て、決められた流れに合わせます。

16.「全部積んだ?」を最後に確認する

機材、工具、小道具、ケース。

劇場に残っていないか、最後にもう一度見ます。

17.そのまま次の劇場へ行くこともある

ツアー公演なら、積み込んだ大道具や機材が次の街へ向かいます。

また別の劇場で、その劇場に合わせて同じ作品を仕込み直します。

18.終わった物にも、その先がある

倉庫へ保管する物。

返却する物。

別の公演で使う物。

適切に処分する物。

物にも、バラシのあとがあります。

19.そして最後に原状復帰

持ち込んだ物がなくなっても、まだ終わりではありません。

劇場から借りたもの、位置を変えたもの、動かした設備を所定の状態へ戻します。

これを原状復帰といいます。

20.テープ一枚を剥がすのも原状復帰

仕込みで貼ったバミリや仮の表示も、不要になれば丁寧に外します。

小さなテープ一枚も、その作品が劇場へ残したものです。

21.少しずつ「作品」が消えていく

壁がなくなる。

階段がなくなる。

照明機材が外れていく。

ケーブルがなくなる。

数時間前まで物語があった場所が、少しずついつもの劇場へ戻っていきます。

22.でも、舞台そのものがなくなるわけではない

作品の世界はなくなっても、劇場は残ります。

そして次には、また別の作品がやってきます。

次の作品を迎えられる舞台に戻った。

ということでもあります。

23.最初の日と、同じ場所へ戻ってくる

仕込みの朝、まだ作品の世界がなかった舞台。

そこへ人と物が入り、作品が生まれ、そして最後にまた元の場所へ戻ります。

ひとつの大きな一周です。

24.新人だった人にも、ひとつの舞台が残る

入口も分からなかった。

上手・下手も怪しかった。

知らない言葉ばかりだった。

でも、仕込み、場当たり、本番、終演、バラシまで見た。

最初には見えなかったものが、きっと少し見えるようになっています。

第一部のおわりに

バラシは、舞台を壊す仕事のように見えるかもしれません。

でも、それだけではありません。

使った物を次へ渡す。

借りたものを元へ戻す。

劇場を次の作品へ渡す。

そして、自分たちも次の現場へ向かう。

舞台を終わらせることも、舞台をつくる仕事のひとつです。

第1回からここまで、舞台の入口を一周しました。

劇場へ入る。

仕込む。

舞台袖を見る。

声を掛け合う。

キューを覚える。

場当たりをする。

通し稽古をする。

ゲネプロをする。

本番前の準備をする。

お客さんを迎える。

本番を進める。

終演する。

そして、バラシをして、劇場を元へ戻す。

でも、舞台の世界には、まだまだたくさんのことがあります。

大道具。

舞台機構。

小道具。

安全。

劇場の設備。

ツアー。

舞台監督。

演出部。

本番中のトラブル。

舞台で使う言葉。

そして、それぞれの仕事をしている人たち。

次からは、この入口から、もう少しずつ奥へ入っていきたいと思います。

最後に、もう一度。

最初から何でも知っている必要はありません。

見る。

ちょっと考える。

分からなければ、聞いてみる。

そして、できることをひとつやってみる。

舞台の仕事は、そこから始まります。